総義歯から有歯学へ
歯を全て失った場合に作成するのが総義歯で、歯に行うのが有歯顎(歯がある場合)の治療です。総義歯は歯ぐきの上に乗っかっているため、外れないことと、咬みやすくすることが課題です。一方、有歯学は全ての歯が均等に当たることで咬めるので、個々の歯を踏まえた全体の咬み合わせをどのようにするかが課題です。
総義歯の咬み合わせは1900年初頭に開発された器具や理論がいまだに使われていることから総義歯の咬み合せの理論の概要はその時代に確立されたと考えられますが、有歯学の咬合理論は1920年頃から研究が始まります。ここで疑問なのが総義歯の研究は100年以上も続けられてきたのに、有歯学の咬み合せの理論がその間に研究されなかった理由です。
1800年代半ばから1900年にかけての産業革命によって工業化が進み全ての産業に大きな変化がありました。歯科界においても同様で(写真左)から電動エンジン(写真右)に変わりました。このことは歯を削る能力と効率が格段に改善されることとなり、多くの歯を効率よく削ることが可能になり、口全体の有歯学の治療が行われるようになりました。その結果、口全体を治療するための有歯学の咬み合せの理論が研究されるようになったと考えられます。つまり、足踏みエンジンでは治療できなかったので、研究されなかったというわけです。
そして1926年2つの有歯学の咬合理論が産声を上げます。
アメリカの西海岸ではMccollmが16人友人を集めてカリフォルニア・ナソロジカル・ソサエティという小さなスタディーグループを設立します。アメリカの東海岸ではSchuylerがニューヨーク・デンタルジャーナルに論文を発表します。この2つの小さな始まりが世界の咬合理論の発展に大きく寄与することになります。