086-222-3194

〒700-0806 岡山県岡山市北区広瀬町11-19

ご予約はコチラ

診療時間
8:30:12:30/14:30~18:30
休診日
水曜午後、木曜、日曜、祝日

ブログ

咬み合せの歴史  その12

少し専門的な解説です。
「咬み合せの歴史」を書くに際し、大阪歯科大学図書館が所蔵している咬合、顎関節、総義歯の書籍と関連する学会誌約350冊に加えて、「オクルージョンの臨床」第2版の訳者の川村貞行先生から頂いた1900年代初頭からのアメリカで発表された咬合に関する論文、初期のナソロジーの大家の舘野常司先生から当時のお話と資料を頂き、金属焼付けポーセレン開発者の桑田正博先生からも当時のお話と資料を頂きました。
これらの情報を年代別に分類分析し、咬合理論の経時的変化を踏まえてまとめています。
咬耗1.jpg
ナソロジーの咬合理論 その⑥ 
犬歯誘導へ その2
現存する古代人の多くの歯が残っている頭蓋骨(skull)を分析すると(上の写真は古代人の上顎で、全ての歯が磨り減っています)、高齢になると共に咬耗し、フルバランス(下顎を動かした時に常に全ての歯が接触している状態)のような状態になっている場合が多く見られます。このことから総義歯(歯が全く無い義歯)の咬み合わせはフルバランスが理想的な咬合だと考えられてきたと推測されます。
ところがD’Amicoは多くの頭蓋骨の中で咬耗していない頭蓋骨を見つけ出し、下顎運動時は犬歯によって誘導されたことで咬耗しなかったと考え、これが理想の咬み合わせだと考え歯を咬耗させないためには犬歯誘導が良いと考えた理論を発表したと推測されます。
図30.jpg
図31.jpg
当時のナソロジーはフルバランスで修復されていたことと、咬頭の磨耗が咬合性外傷による問題が起こることが多かったことをD’Amicoの論文を翻訳した保母須弥也先生が書籍の序章(上の画像)に書かれています。これらのことから、ナソロジーの従来のフルバランスでの修復ではなくD’Amicoの理論から考えられた「ミュチュアリー・プロテクテッド・オクルージョン」にすることで、今まで起こっていた咬合の問題が解決されると考えたと推測されます。
その思いが「プロテクテッド(保護)」という言葉に表れています。
臼歯離開でも咬合面の形態はそのまま
1960年に「ミュチュアリー・プロテクテッド・オクルージョン」が発表された10年前の1950年にP.K.Thomasはたワックス・コーン・テクニックを発表しています。この理論は有歯学でフルバランスの咬合を付与するためでしたので、「ミュチュアリー・プロテクテッド・オクルージョン」の理論によって犬歯による臼歯離開咬合によってその咬合面の形態の必然性はなくなったと考えられます。しかしながら、そのままの咬合面形態と作成方法を生かして「オーガニックオクルージョン」という新たな概念が考えられます。その理論は臼歯が離開した後に上下の臼歯の咬合面が一定の距離を保って離開することで咀嚼効率を良くすることが必要だと考えられました。その結果、従来のP.K.Thomasの作成方法と同様に臼歯をフルバランスで作成した後に、臼歯を離開させるために犬歯の舌側に形態を付与する方法が考案されました。
あくまで推察ですが、1960年当時のナソロジーではP.K.ThomasがMccollmの後継者としての地位を確立していたのではないでしょうか。