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咬み合わせの歴史歯科治療
咬み合せの歴史 その16
少し専門的な解説です。
「咬み合せの歴史」を書くに際し、大阪歯科大学図書館が所蔵している咬合、顎関節、総義歯の書籍と関連する学会誌約350冊に加えて、「オクルージョンの臨床」第2版の訳者の川村貞行先生から頂いた1900年代初頭からのアメリカで発表された咬合に関する論文、初期のナソロジーの大家の舘野常司先生から当時のお話と資料を頂き、金属焼付けポーセレン開発者の桑田正博先生からも当時のお話と資料を頂きました。
これらの情報を年代別に分類分析し、咬合理論の経時的変化を踏まえてまとめています。
PMS、Dawson その③
1900年初頭にGysiがゴシックアーチを開発してから歯科界では長年に渡って中心位(顎関節の適正な位置)、最大咬頭嵌合位(上下の歯が最も多く咬み合っている位置)はゴシックアーチの頂点で、一致させることが常識でした。
Schuylerの理論も同様に
・中心位は下顎の最後退安静位で、その位置から側方運動ができる
・ゴシックアーチトレーサー(ゴシックアーチの記録をとる装置)を使用できない有歯顎での中心位はHickok bite-checkの牽引器(上記左の写真)を使用し3pound(1360g)で牽引することでした。
しかしながらSchuylerの独自の見解として
有歯顎、無歯顎を問わず無害な平衡咬合関係の第一必要条件は、
「中心位と中心咬合位の調和であり、中心位から安静中心位までの水平の自由性がある」
と考えられました。
上記の右図はSchuyler が1960年頃にPM哲学(Pankey 、Mannが考案した理論のセミナー)の教授に就任し講義で使用されていた資料です、ゴシックアーチの頂点から少し前方に最大咬頭嵌合位が示されています。また、中心位から安静中心位までの水平の自由性をもたせています。
このことから、Schuylerの考える最大咬頭嵌合位はゴシックアーチやHickok bite-checkの牽引器で中心位の位置を確認した上で、最大咬頭嵌合位はその少し前方で中心位を含めた面(long centric)だと考えていたようです。