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咬み合わせの歴史
咬み合せの歴史 その39
少し専門的な解説です。
「咬み合せの歴史」を書くに際し、1911年に創立した大阪歯科大学の図書館が所蔵している咬合、顎関節、総義歯の書籍と関連する学会誌約350冊に加えて、「オクルージョンの臨床」第2版の訳者の川村貞行先生から頂いた1900年代初頭からのアメリカで発表された咬合に関する論文、初期のナソロジーの大家の舘野常司先生から当時のお話と資料を頂き、金属焼付けポーセレン開発者の桑田正博先生からも当時のお話と資料を頂きました。
これらの情報を年代別に分類分析し、咬合理論の経時的変化を踏まえてまとめています。
日本国内での咬合理論の歴史を書籍から分析する
日本国内における書籍や学会誌から有歯学の咬合に関する書籍を分類したところ、最も古い書籍は1962年「オーラル・リハビリティション(咬合改良法)」中沢勇 ; 小林俊三 ; 小沢孜でした。その内容は咬耗と欠損の患者さんをメタルのスプリントで挙上してから、全顎治療の1症例の治療過程が掲載されています。
国内の歯科医師育成の歴史は1890年に最も古い東京歯科大学の前身の歯科の専門学校が創設され1946年に大学に認可されています。このことから考えれば日本国内においては1950年代から有歯学の咬合理論が研究され始めたと思われます。そして、1950年代は保母須弥也先生、舘野常司先生など多くの著名な先生方がアメリカ各地で学ばれた後に帰国され、その理論を広められたと考えられます。
2000年代までに国内で出版された書籍や学会誌から咬合に関する書籍を分析すると、有歯学の書籍は1960年代が2冊、1970年代が19冊、1980年代が30冊、1990年代が37冊、2000年代は49冊と徐々に増えていきます。それらの中であきらかにナソロジーと思われるものが 1970年代に7冊、1980年代に2冊、1990年代が1冊、2000年代に4冊出版されており最多の著者が保母須弥也先生です。また、保母先生に師事されていた岩田建夫先生も2冊出版されています。
一方、PMS,Dawsonの書籍は1970年代から出版されているSigurd P.Ramfjord ; Major M.Ash の3冊とP.Dawsonの3冊です。
ナソロジーとPMS,Dawson以外の書籍は、一部の理論のみを引用している場合や過去の理論の寄せ集めのようになって整合性が少ない書籍が多いため分類することが難しいと感じました。また、新たな理論もあるのですが、継続性が無く数年後には消えてしまっているものも多いので参考に値しないと考えました。
咬合理論の歴史は1900年初頭からの総義歯の理論を応用して有歯学の咬合理論となり、ナソロジーとPMS,Dawsonの2つの理論を中心に研究されました。1976年に開催された「Occlusion Focus Meeting」の結論はそれまでの咬合理論が一定の結論に達したと考えられます。そのため、それ以降はこれらの内容を理解した上での理論を展開しなければならないと考えています。
以上のことから参考にできる咬合理論の書籍はナソロジーとPMS,Dawsonに分類できる書籍だけだと考えました。